2007-01-01から1年間の記事一覧

後藤明生 『日本近代文学との戦い』(柳原出版)

表紙自体に遺稿集の文字はないが遺稿集。四十歳前後の写真しか見たことがなかったので、巻頭に付されたいかにも老人めいた晩年の写真を見て、こりゃ確かに晩年だわ、と変に納得するところがあった。しかし文章自体には晩年にあるという印象はまったくない。…

後藤明生 『円と楕円の世界』(河出書房新社)

後藤明生初のエッセー集。小説以外の文章を「エッセー」という言葉でひとくくりにしてしまうのは乱暴なような気がするのだけど、他に適切な言葉も思い浮かばない。 「楕円」というのは自分と他者と二つの中心により世界を認識しようとする後藤明生が武田泰淳…

不振が不審だ

食欲不振で冷たい麺類(ソーメン、ソバ、ウドン、冷し中華)ばかり食べているというのに、しばしば「何か美味いもんが食べたいなぁ」と思う。至極漠然として「美味いもん」であって、具体的に何か料理を思い浮かべると「ああ、でも食べる気せーへんし、今日…

今週の購入

藤枝静男 『壜の中の水』(講談社) 『群像 1993年7月号 追悼 藤枝静男 佐々木基一』(講談社) 『壜の中の水』を読み終えると、単著として刊行された藤枝静男の著作は全部読んだことになる。

天沢退二郎 『オレンジ党と黒い釜』(筑摩書房)再読

「黒い魔法」の力を利用しようとする「古い魔法」使いである源先生と「時の魔法」に属するオレンジ党の子どもたちとの戦い、と今読んでもなんともややこしい。オレンジ党と黒い釜 (fukkan.com)作者: 天沢退二郎,林マリ出版社/メーカー: ブッキング発売日: 20…

茹だる

暑さに脳をやられて、夏はなぜ暑いかということを考えたりする。南中高度が高いとか日照時間が長いとかその程度のことしかわからない。

本日の借本

天沢退二郎 『闇の中のオレンジ』(筑摩書房) 天沢退二郎 『オレンジ党と黒い釜』(筑摩書房) 天沢退二郎 『黒い沼』(筑摩書房)

後藤明生 『謎の手紙をめぐる数通の手紙』(集英社)

短篇集。表題作となっている「謎の手紙をめぐる数通の手紙」では珍しく冒頭から明確な「謎」が出てくる。後藤明生が扱う「謎」は、何気ないところからまるで手品のように引っ張り出されてくる「謎」が多いので、これはちょっと意外だった。わかりやすく謎め…

後藤明生 『汝の隣人』(河出書房新社)

全編イニシャルだらけで、どう考えても作者自身である人物もGと呼ばれる。先輩作家Kは小島信夫で、対談相手の女流作家Kは同年配とあるから、多分倉橋由美子なんじゃないかと思う。金井美恵子だと後藤明生より年下で、河野多恵子だと年上になる。女流作家…

図書館へ

昨日は炎天下(というほど暑くもなかったのだけど)大変くたびれたので、午前中から図書館に行ってのんびり読書。受験生に交じってグダグダ本読んでるだけ、というのもなんだか後ろめたい。一時過ぎくらいに、一人力尽きて机に突っ伏してしまうと、連鎖して…

本日の購入

石川淳 『至福千年』(岩波書店) 小川国夫 『或る聖書』(筑摩書房) 加藤周一 『幻想薔薇都市』(新潮社) 『新潮日本文学アルバム 志賀直哉』(新潮社) 『新潮日本文学アルバム 永井荷風』(新潮社)

下鴨納涼古本まつりに行く

奇特な人といるのはいるもので連絡をくれたtomoさんと一緒に下鴨納涼古本まつりへ。度々休憩を挟みつつ二時間ほどいて、結局500円以下の安いものしか買わず。後藤明生が何かないかと探してたのだけど、結局一冊も見つけられず、tomoさんに「後藤明生なんて今…

下鴨納涼古本まつり

8月11日(土)か12日(日)のどちらかに、京都下鴨神社で開かれる下鴨納涼古本まつりに行くつもりで、折角お祭りなので、他に行ってみたい人があれば一緒に行こうじゃありませんか、というお誘いなのですが、ここを見ていて、関西在住で、なおかつ炎天下数時…

本日の借本

後藤明生 『円と楕円の世界』(河出書房新社) 後藤明生 『汝の隣人』(河出書房新社) 後藤明生 『謎の手紙をめぐる数通の手紙』(集英社) 後藤明生 『日本近代文学との戦い』(柳原出版) 真銅正宏 『小説の方法 ポストモダン文学講義』(萌書房) なんだ…

中之島

府立中央図書館の蔵書を中之島図書館で受け取ることが出来るとのことで、ネット予約して中之島へ。梅田から地下鉄に乗らずに中之島まで歩けば府立中央図書館に行く三分の一ほどの電車賃ですむのでありがたい。

後藤明生 『分別ざかりの無分別』(立風書房)

初期のエッセー集。飛騨に行けば、『高野聖』の話になり、佃島に行くと『墨東綺譚』へと脱線する。小説として書かれていないはずなのにどこか小説めいてくる。自分の身辺を題材としても小説が私小説化することのない後藤明生の場合、エッセーも自然と小説に…

天沢退二郎 『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』(筑摩書房)

1994年に刊行されたもので今回が初読。 相変わらず不思議というか不気味なファンタジーなんだけど、ユーモラスでもあって、「グーンの黒い地図」に出てくる出目金少女隊とか思わず笑えてしまう。ねぎ坊主畑の妖精たちの物語作者: 天沢退二郎出版社/メーカー:…

『電脳コイル』第十三話「最後の首長竜」(ETV)

オバちゃんがリアル女子高生でのけぞったり、イサコ様不足でもだえたりしつつ、そうかぁ来週は総集編かぁ、と思いきや、次回放送は25日とあって唖然。二週間も放送がないだなんて、まるで肉抜きの牛丼、カルピスのない夏休みみたいじゃないか! と一人吠える…

後藤明生 『小説の快楽』(講談社)

後藤明生生前に刊行された最後の本。 タイトルにもなっている「小説の快楽」で芥川竜之介の『芋粥』と宇野浩二の『蔵の中』がゴーゴリの『外套』を挟んで繋がることを示し、小説が、小説を読んで書かれたものであることを解き明かすくだりは後藤文学のエッセ…

天沢退二郎 『オレンジ党、海へ』(筑摩書房)

『オレンジ党と黒い釜』、『魔の沼』と続いた「オレンジ党」シリーズ(一応の)完結編。地元の図書館には『魔の沼』までしか置いてないので子どもの頃にも読んでいないはず。あるいは小学校の図書館で借りて読んでいたかもしれないが、記憶は定かじゃない。 …

『電脳コイル』第十二話「ダイチ、発毛す」(ETV)

今までで一番笑ったかもしれない。京子のチュウ顔とかツボ。イサコのみヒゲ顔回避されちゃうあたりスタッフの偏愛を感じる。 生れ故郷にたどり着いたヒゲイリーガル達が高度な文明を発展させ、ピンチに落ち入ったヤサコ達を救う、みたいな展開があれば凄いと…

後藤明生 『使者連作』(集英社)

書簡体の九編からなる連作で、実名があがられている人物が実在するのは確認出来たけれど、イニシャルだけの人物は実在するかどうかわからない。 手紙はすべて韓国旅行中の体験に関するもので、後藤明生と韓国はいささか複雑な関係にある。後藤明生は日本統治…

『電脳コイル』第十一話「沈没! 大黒市」(ETV)

なんとなくウルトラマンちっくな回。ヤサコが完全に脇役に回った回でもある。 京子はコミックリリーフ的な役割が主であって、あまりストーリーに絡んでこないように思っていたのだけど、今回の案外とダイチに懐いている様子を見ると、元祖黒客組(ダイチ)、…

後藤明生 『眠り男の目』(インタナル出版)

追分での『挾み撃ち』執筆の様子をつづった「作家ノート」。作者自身も書いている通り創作ノートではなくて、生活雑記のようになっている。小説が随筆に近づいている作家は結構いるが(私小説家の晩年など特にその傾向がある)、後藤明生の場合、エッセーが…

第137回芥川賞

諏訪哲史『アサッテの人』に決定。種村季弘に師事とあって、へーと思う。 円城塔は芥川賞候補になってなくとも『Self-Reference ENGINE』が気になってたので、近いうちに読んだかも知れないのだけど、川上未映子は「芥川賞候補を読む」ということをしなけれ…

芥川賞候補作を読む

普段同時代の文学をほとんど読んでいないので、このような企画を行うのは僕には不向きだったなぁと思うのだけど、一応全部読んだので感想を記してみたい。ということで以下長くなるので続きを読むで。

後藤明生 『蜂アカデミーへの報告』(新潮社)

岩井氏とのが蜂談義をそのまま後藤明生の自説解説みたいになっていて、井伏鱒二の『スガレ追ひ』に対しての「このウソかホントか、すれすれの境界。ウソでもありホントであるところの境界。その境界が、この小説の妙味ですな」という言葉は、そのままこの小…

『電脳コイル』第十話「カンナの日記」(ETV)

今週もとっても面白く、来週もとっても面白そうで、日曜日は前日の余韻を楽しむとして、平日はスパっとすっ飛ばしてしまいたいくらいな今日この頃です。イサコにお兄ちゃんがいることが確定。イサコが妹キャラであることは前々から想像(妄想)していたけど…

本日の借本

天沢退二郎 『オレンジ党、海へ』(筑摩書房) 天沢退二郎 『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』(筑摩書房) 後藤明生 『分別ざかりの無分別』(立風書房) 後藤明生 『眠り男の目 追分だより』(インタナル出版社) 後藤明生 『使者連作』(集英社) 後藤明生 …

芥川賞候補を読む

ということで、府立中央図書館まで出向いて芥川賞候補を一気に読んできたりした。感想は多分日曜あたり。しかし、こんなに面白くないものなの? ってな具合で感想書くにもネガティブなものになっちゃいそう。 何でも読んでいるようで、普段いかに選り好みし…