後藤明生 『円と楕円の世界』(河出書房新社)

後藤明生初のエッセー集。小説以外の文章を「エッセー」という言葉でひとくくりにしてしまうのは乱暴なような気がするのだけど、他に適切な言葉も思い浮かばない。
「楕円」というのは自分と他者と二つの中心により世界を認識しようとする後藤明生武田泰淳の『司馬遷』から得た認識であって、これが「何故小説を書くのか、それは小説を読んだからだ」という後藤明生の小説原理に繋がっていく。題材や方法の変遷はあってもこの原理自体は生涯一貫していたというのがなんとも凄い。
どうでもいいことだけど、丹羽文雄との初対面のことを書いた短文「初対面の錯覚」の最後にちらりと出てくる「アメリカから戻っていたお孫さん」というのはBS-iのプロデューサー丹羽多聞アンドリウのことだろう。