志賀さんと藤枝さん

志賀直哉の短編集の解説を、藤枝静男が書いているというのをインターネットのどこかでみかけて、それは全然知らなかったと、本棚をガサゴソとして、探し出してきたら、解説を書いているのは高田瑞穂という人で、藤枝静男ではなかった。よくよく確かめてみたら僕が持っているのは新潮文庫の『小僧の神様・城の崎にて』で、藤枝静男が解説を書いているのは角川文庫の『城の崎にて・小僧の神様』ということだった。ややこしくて困ってしまう。
昨日、帰りにブックオフに寄ると、丁度その角川文庫版が105円で売られていたので買って来た。角川文庫版には十五篇、新潮文庫版には十八篇収められていて、そのうち十一編が重複している。新潮文庫版になくて、角川文庫版にあるのは『母の死と新しい母』『清兵衛と瓢箪』『正義派』『プラトニック・ラブ』の四篇で、折角なのでついでにこの四篇だけ読んだ。藤枝静男の解説を読むのが主で、志賀直哉の作品を読むのがついでだとは、我ながら、贅沢というか不遜とかいうか、実に罰当たりな話だ。解説の最後に描かれた鉄棒を飛び越える志賀直哉の姿が愉快だった。