買い物日記

帰りにブックオフに寄ったら、新潮社の日本文學全集が一冊五十円で投売りされていたのでいくつか買ってくる。『里見紝/宇野浩二集』『石川淳集』『武田泰淳集』『堀田善衛集』の四冊あわせて二百円。刊行は昭和三十七年なのだけど、箱や背表紙は日に焼けているものの、中身は奇麗なもので、しおりを動かした形跡もなく、おそらくは本棚の飾りになっていたものだと思う。この中で読んだことがあるのは宇野浩二の、それも『蔵の中』一篇だけ。昭和三年に発狂した宇野浩二が面会に来た芥川龍之介に「君や僕は悪鬼につかれているんだね。世紀末の悪鬼とい云うやつにねえ。」といった話は有名で、その翌月に芥川龍之介はぼんやりとした不安のため死ぬ。この話は内田百輭も『山高帽子』という短編の中で書いている。宇野浩二の方はその後快復し、昭和三十六年まで生きた。
石川淳は残念ながら漫画家のいしかわじゅんとは別人。