同級生

担任の教師が冬休みの課題を黒板に書き記した。その中にいくつかの選ばれた映画の中から一つ選んで感想を書くというものがあったのだけれど、光のあたり具合の所為か、板書された映画のタイトルがちゃんと見えず、しかたなしに隣りの席の女の子に聞くことにした。
「悪いけど、ちょっとノート見せてくれへん」
「ええよ」
軽く頷いて見せてくれたノートの彼女の字は、薄く上品な奇麗な字で、筆圧が強く子供っぽい丸字の僕の字で彼女の字を書き写すのが憚られるように思えた。
「な、な。こんな決められた中から見るんやなしに、自分の好きな映画見て感想書いたらあかんのかな。率直な自分の感想を書くのが重要なんであって、映画自体はなんでもええんとちゃうやろか」
「駄目なんやない。それでええんやったらあんな風にわざわざ選んであるわけないもの」
その言葉に僕は不満だったが、まるで違うことをいった。
「それやったら、なんかあの中から一緒に見にいこか」 
「残念やけど、それはできひんよ」
「え? なんで?」
その問いに彼女は顔をはっきりとこちらに向けてからこう答えた。


「だって私はあなたの過去の同級生だもの」


そこで、はっと目が覚めた。
なんだか作り話めいた話なのだけれど、実際に今朝がた見た夢の話で、最後に見た彼女の顔には見覚えがあるような気がした。しかしそれが高校の同級生なのか、中学の同級生なのかははっきりとしない。小学校の時の同級生が十四、五歳になればあんな風であるような気もするし、幾人かの同級生が交じり合っていたようにも思える。どうにももやもやとしてしまって、近いうちに街中でばったりとあの子に再会したりするのではないか、ということまで頭に浮んできたりした。
つまりは夢の中の同級生に恋をしてしまったということなのか。
ますます作り話めいてしまうが本当のことだからしかたがない。