ぐずついたお天気

歩道の脇に備え付けられた柵状のあれもガードレールというのかどうかよくわからなかったので、今調べてみたらガードパイプといういかにも安易な名前がついていて、いやそんな話はともかくとしてそのガードパイプとやらを傘でカンカンと叩きながら歩いている小学生がいて、単にその光景だけを見たならば、乱暴な暴力的行為ということになるのだろうけど、彼の表情はなにか憎々しげにといった風ではまるでなく、あれはなんといえばいいのか、恍惚とかうっとりとかといった少し呆けたような表情に近く、一体いかなる衝動のもとに彼はガードパイプを叩いてまわっているのか、少し気になったりして、そういえば自分もあの時分の頃に似たようなことをした記憶があり、なんでそんなことをしたのか今となってはよくわからないのだけれど、暴力的というよりかは、カンカンと音をたてるその音の方に意義を見出していたように思え、そうしてみると彼は今一人演奏会を行なっているのであって、あの呆けたような顔は楽器奏者が見せる自己没入の顔なのだろうか。
今にも降りだしそうな空模様の下、彼が行ってしまうのをすっかり見送り、ぐずついたお天気なんていう言い回しは、まるでお天気が幼児であるかのような言い方じゃないかなどとふと思った信号待ちの一コマ。