エスカレーターで聞いた話

「東京タワーでコロコロ転がしてたやんか」と、母親らしき女が息子らしき子供へいっているのを、反対側の食料品売り場へ下るエスカレーターで聞いた。
東京を遠く離れた大阪の小都市で突然聞く「東京タワー」という言葉はひどく奇異なものに思え、一体なにを転がしたというのか、いやそもそも東京タワーのどこにコロコロ転がせるところがあるというのか、なんだか楽しげな口調だったこともあって、売り場を巡りながらも、妙に気になってしまい、追いかけていって訊ねてみたいと思ったのだけれど、「一体全体、東京タワーでナニを転がしたんです? タワーでナニを?」なんていおうものなら、奇異で妙どころか、変質者扱いされかねないだろうから、止めておいた。
それにしても、色々想像してみたけれど、東京タワーのどこで、なにを転がしたのかまるで見当がつかず、東京タワーといえばモスラであるから、繭になったモスラの幼虫が東京タワーからコロコロ転げ落ちて、不忍池にポチャンとはまるところを想像してみたりした。