本日の購入

小林秀雄 『考えるヒント』(文春文庫)
小林秀雄 『考えるヒント2』(文春文庫)
松浦寿輝 『ものの たはむれ』(文春文庫)


なんとはなしに手にとった『考えるヒント』の冒頭一行目に

学生時代、好んでエドガー・ポーのものを読んでいた頃、「メールツェルの将棋指し」という作品を翻訳して、探偵小説専門の雑誌に売った事がある。

とあって、小林秀雄が、大岡昇平と一作だけポーを共訳しているのを不思議に思っていたので、その辺の事が書いてあるのかと思い買ってきて読んでみたら、別に書いてはいなかった。しかし、ボードレールとの関係を思えば、小林秀雄がポーを訳していても格別不思議なことはなく、そういえば、ボードレールがポーについて書いている文章を小林秀雄が訳していたりしたはずで、などと思いながら、創元推理文庫の『ポオ小説全集』を引っぱりだしてくると、大岡昇平の註釈がついていた。『メールツェルの将棋指し』は、無名時代のアルバイトとして、訳者の名前を出さず『新青年』に掲載されたもので、しかもボードレールのフランス語訳からの重訳であって、割愛されたところも多く、全集収録の際に大岡昇平が補ったとある。共訳というわけではなかったようだ。ついでに書いておくと森鴎外もポーを訳してたりする。ついでのついでに、筒井康隆の『乱調文学大辞典』を探しだしてきて、ポーの項をひいてみたりした。

怪奇幻想文学の側面では谷崎潤一郎に、推理小説の側面では江戸川乱歩に、SF小説の側面では海野十三に、淫蕩と酒乱の側面ではすべての作家に影響をあたえた作家。

とあった。ポーは偉大である。

ついでにボールレールの項を見ると、

腐りかけた板製の線路。

とあった。そういえば、ボードレールプラレールの一種だ、といったら信じた人がいた。


松浦寿輝は、おそらく好きな作家だろうと、読まず好きをしていた作家で、読まず嫌いをしていた作家を読んでみたらやっぱり嫌いだった、ということになりそうなので買ってきた。