窓の外の声

自分の部屋で寝そべっていまひとつ乗り切れずに本を読んでいると、わずかに開けた窓からママゴトに興じているらしい子どもたちの声が聞こえてきて、なんとはなしに耳を傾けていた。お母さん役らしい少女が「明日も学校なんだからちゃんと用意しなさい」と作った声でいったあとに、「あ、○○ちゃんお帰りい、どこ行ってたん?」と地に戻っていうギャップが面白く、耳をそばだてていると、地のときは関西弁なのに、お母さん役のときは標準語になっているのに気づいた。彼女の母親もまた関西弁を喋るに違いないのだから、彼女は「自分の母親」を演じているわけではなく、抽出された「母親」というイメージを演じているのだろう。
やがて、母親らしきまだ若い女の声が、少女の一人を関西弁で呼んだところで、父と母と娘と赤ん坊のいる路上のホームドラマは唐突に終わってしまった。