自転車に乗って

帰る途中にファミリーマートに寄って、ジャンボフランクを買い、行儀悪く咥えながら自転車に跨り、しばらく進むと、後輪から甲高い異音が発せられ、ペダルがやや重くなった。なにか挟まったかどこかひん曲がったのか、降りて調べて見るもよくわからない。仕方ないのでそのまま乗っていたが、異音はキーキーと酷くなり、ペダルも重くなる一方なので、降りて押していくことにする。降りて押したところで、後輪から異音が発せられるのに変わりなく、時々後輪を浮かせてみたりするのだが、そのままずっと持ち上げられているわけもなく、キーキーと甲高く響く音に酷くうんざりしながらどうにかこうにか帰路も半ばを過ぎたところで、スピード違反の取り締まりの為、物陰に潜んでいたらしいパトカーの警官にライトを浴びせられ止められる。明らかに不審だから止められるのは仕方ないが、防犯登録を調べられ、手間取られるのは間違いないだろうと、げんなりしつつ、「いや、自転車の後輪の具合がどうもおかしくて」などと善良な一市民の困り顔をしてみせつつ対応すると、「なにか悪戯されましたか」とその返答がいかにも警官らしくて少しおかしい。「いやどうもわからんのですが」と、丸顔で太り気味の制服よりもサンタの衣装のほうが似合いそうな警官に後輪を指し示しペダルを回してみせると、警官は、ライトを当て、ペダルを回し、ブレーキを試し、「こりゃブレーキじゃないですかな。ブレーキだ」「ブレーキなんですかねぇ」「多分、ブレーキでしょう。修理に出した方がいいですな」と、なにやら笑顔で納得され、結局防犯登録を調べられることもなく開放された。そんなこんなで、自転車で二十分もかからない道程を五十分かかってようやく家にたどり着いた。大変草臥れた。
これもおそらくテンプル騎士団の仕業に違いないと思う。