野間宏 『暗い絵』

冒頭、延延と粘着質なまでに続けられる絵の描写に興味を駆られ、わざわざ図書館にいってブリューゲルの画集を手繰ってみるのだけど、該当するような絵は見当たらず、不思議に思ってよくよく読み返してみれば、「これらはフランドルの画家、百姓ブリューゲルの絵画集から深見進介の得た印象――奇妙な、正当さを欠いた、絶望的な快楽に伴うごとき印象、そしてまた、そうした暗い快楽の深い穴の中で無益に蠢きもがいているとも言えるような印象の集りである」とあった。つまりは一枚のブリューゲルの絵の描写なのではなくて、ブリューゲルの画集全体からうけた印象の複合された描写だったわけだ。ブリューゲルを媒体とした文字によって描かれた絵が『暗い絵』だ、といってもいいのかもしれない。


追記
http://www.artchive.com/artchive/B/bruegel.html
ここでいろいろ見れる。