森茉莉 『ボッチチェリの扉』

単に物語だけ見てみれば単純なロマンスものに過ぎず結末も安易なのだけど、それを語る語り手が物語そのものには何ら関係しないに関わらず、自らの夢想を現実に具現せしめるような語り方をするために安直なロマンス物語に夢幻的な彩りを与えていて、独自の世界観を作り出している。とはいってもやはり少女小説的世界観は脱していないので読み手は選びそう。

森鴎外の著作よりも娘である森茉莉の著作の方をより多く読んでいるというのは何だか鴎外先生に申し訳ない気がして、古本屋でみつける度に森鴎外の本を買ってきたりはするものの、どんどん溜まっていく一方で全然読んでいない。