P・D・ジェイムズ/山室まりや訳 『女の顔を覆え』(ハヤカワ文庫)

P・D・ジェイムズは、『女には向かない職業』『皮膚の下の頭蓋骨』と続けてコーデリア・グレイものを読んで感銘を受けたので、古本屋で見かける度に買ってはいたものの、結局コーデリア・グレイもの以外は一冊も読んでいなかった。年末に五・六年ぶりに『女には向かない職業』を再読し改めて感銘を受けたので、本棚や本の山(山というより壁というべきかもしれない)の中から探しだしてくると、『女の顔を覆え』『ある殺意』『不自然な死体』『ナイチンゲールの屍衣』『黒い塔』と、五冊もあったので、順に読んでいくことにした。
この『女の顔を覆え』はP・D・ジェイムズのデビュー作であり、まだ元来の推理小説の枠組みを大きくはみ出すものではなく、人物描写の濃厚さはすでにあるものの『女には向かない職業』『皮膚の下の頭蓋骨』を読んで感じたP・D・ジェイムズ独自の世界(というよりテーマか?)はまだないように思えた。とはいっても普通の推理小説として十分に面白い。