黒井千次 『石の話 黒井千次自選短篇集』(講談社学芸文庫)

巻頭に置かれた『ビル・ビリリは歌う』が書かれた時、まだ二十代であった作者が、作中人物と共に年老いていき、巻末の『散歩道』では六十代の老人になっているのが、なにやらひどく新鮮で、得体の知れない「ビル・ビリリ」が追い出される『ビル・ビリリは歌う』で始まり、散歩の帰り、鍵のかかった自宅前で立ちつくす『散歩道』で終わる構成もよかったと思う。
講談社文芸文庫のよいところは、年譜と著者目録がキチンとついてくることで、次読むものへの手がかりとなるので嬉しい。