島田雅彦 『自由死刑』(集英社文庫)

島田雅彦町田康舞城王太郎の三人は、僕にとって三大読まず嫌い作家だったのだけれど、ある突然「島田雅彦町田康を読むのだ*1」という指令をどこからともなく受け取ってしまったので、読んでみることにした。
『自由死刑』というというタイトルと、女に背負われた赤ん坊に自由死刑を宣告される冒頭こそよかったものの、怪しい業界人、自殺常習者、AV女優、落ち目のアイドル、外科医の殺し屋とロードムーヴィ風に次々に出会っていく展開は、一見荒唐無稽のようでいて、それぞれの人物や出来事自体はそうとうに凡庸で、現実としてはなかなかありえないことかもしれないが、フィクションとしては当たりまえの予定調和の内にあり、あまり面白くない。同じロードムーヴィ風なら中上健次の『日輪の翼』の方が、よほど荒唐無稽であって、こちらの安易な予断などまるで入る余地のない面白いものだった。あと気になるのは、何人もの女と出会いながら、服装と髪型を変え同じ人物が何度も再登場しているような印象で、演劇であれば、同じ女優が何役もするという面白さがあったかもしれないが、小説としてはまるでつまらない。この『自由死刑』が島田雅彦の作品の中では凡作な方だというのであれば、納得がいくが、そうでないとすると、長年読まず嫌いしてきた僕の勘は当っていたということになりそうだ。とはいってももう何冊かは読んでみようと思う。

*1:舞城王太郎を読めという指令は来なかった。