アイザック・アシモフ/小尾芙佐訳 『ロボットと帝国』(早川書房)

鋼鉄都市』『はだかの太陽』『ロボットの夜明け』に続くシリーズ四作目。今回はSFミステリではなくて、ファウンデーションシリーズへの橋渡しとロボットものの集大成という感じで、タイトルにもなっている「帝国」とは当然のちの「銀河帝国」のこと。イライジャ・ベイリはすでに亡く、ダニールとジスカルドがコンビを組む。登場する人間たちはみな単純といっていいほどなのに対し、ロボット三原則と現実とのギャップに苦しみ煩悶しながらも人間を守ることを考え対話を続けるロボットは二人は、度々自分たちは人間のようには思考出来ないと云いながらも、きわめて人間的であるように思える。この構図は『じゃりン子チエ』の人間たち(チエやテツやその周りの人々)と猫たち(小鉄とジュニア)の構図に似ているように思う。テツの後始末やなにやらに狂奔し、度々人間以上の活躍をしながら、あくまで主役はチエちゃんであるとする小鉄とジュニアが次第にジスカルドとダニールの二人に重なっていき、ジスカルドがダニールに「君はまるで人間みたいな考え方をするね」と云うのが、小鉄がジュニアに「君は詩人だね」と云っているように思えてしまう。ダニールがジュニアだとすると、イライジャ・ベイリはお好み焼き屋のオッさんか。ファストルフ博士は花井センセ?
話がずれた。ダニールとジスカルドの二人がロボット三原則全てに優先する第零条に達する過程は感動的で、ラストシーンには思わず涙してしまう。
『はだかの太陽』で、イライジャがダニールに「きみの仕事は、ひとりの人間に危害が及ぶのを防ぐことだが、ぼくの仕事は人類全体に対する危害を防ぐことなんだよ」と云うシーンがあって、これはそのまま第零条じゃないか! と思ったのだけれど、今回格別出てくることはなかった。ちょっぴり残念。