五月の夜

真夜中に、自転車に乗って堤防の上を走っていると、無数の黒々としたものが、こちらからあちらへとずらずらとぶらさげられていて、それがまるで吊るされた人影のように見えて寸刻ぎょっとするも、あれは夕方見たばかりの、いまだ仕舞われない鯉のぼりなのだとすぐに合点する。
家に帰ってから、あの中に本物の吊るされた死体が混じっていたとしても、気づきはしないなと思い、一度そう思ってしまうと、あのずらずらとした黒い影は、鯉のぼりなどではなくて、無数の縊られた罪人であるかのように思えてしまった。
だとするとその罪はなんだろう。鯉のぼりの仕舞い忘れか。