新約聖書
ちょこちょことと新約聖書を読んでいて、ヘロデ大王親子とイエスの関わりに少し興味を持ったりした。
- ヘロデ大王(父) 東方の三博士に「ユダヤの王としてお生まれになった方はどこですか」と尋ねられ、ベツレヘムの幼子を皆殺しにする*1。史実でのヘロデ大王はエルサレム神殿の大改修や、のちに悲劇的な殲滅戦の舞台となるマサダ砦の建築等で知られる。
- ヘロデ・アンティパス(息子・弟) ガリラヤ領主。兄フィリポスの妻ヘロディアを娶り、そのことを洗者ヨハネに咎められ、ヨハネを捕らえるも、逆に感化され、保護に至るが、あくまでヨハネを恨んでいた妻ヘロディアとその娘サロメ*2の奸計により、ついにはその首を刎ねる。こののち、イエス捕縛のおりエルサレムに滞在していたので、ローマ総督ピラトにより一度はイエスを引き渡されるが、イエスに無視され、ピラトのもとに突き返す。
- フィリポス(息子・兄) イツリヤとテラコニテの領主。 弟に妻を寝取られる。
新約でのヘロデ・アンティパスはどうも聖人フェチであったらしく、殺すつもりで捕らえたヨハネには感化され(「マルコ」6・20)、ピラトからイエスを送りつけられると、以前からイエスの奇跡を見てみたかったと喜んでいる(「ルカ」23・8)。しかしイエスの方ではヘロデ・アンティパスを毛嫌いしていたようで、ガリラヤ湖周辺の伝道の際も、ヘロデ・アンティパスが居を構えるティベリアス周辺には一度も訪れていないし、捕縛後の面会でも一言も口を聞いていない。
捉えようによってはこのヘロデ親子とイエス・ヨハネとの関係は非常にドロドロとしていて、東海テレビでメロドラマ化されそうなほどじゃないか、と一人勝手にあれこれ想像して、楽しくなってしまったりしたのだけれど、いかに信仰と無縁だとはいえ、そのような妄りな妄想は慎むべきかもしれない。
また面白いことに、ヘロデ大王による幼児虐殺の話はマタイにしかなく、ヘロディアとサロメによるヨハネ殺しはマルコのみであり、イエス捕縛後のヘロデ・アンティパスとの面会はルカにしかない。なにやら綺麗に分散されているようである。
ちなみにちょこちょこ見ていたのは、岩波文庫の『福音書』(塚本虎二訳)、文語訳『旧新約聖書』、国際ギデオン協会の英文和文対照*3の『新約聖書』の三種。英文和文対照の新約は学生時代先輩がとあるホテルからかっぱらってきたものをさらにかっぱらってきたという曰わくつき。旧約は文語訳のほかに、岩波の『創世記』『出エジプト記』『ヨブ記』があるだけなので、口語訳で読めるものがもう一冊欲しいところ。