解体

小アジの腹を裂き、包丁の切っ先ではらわたを掻き出していて、これってまるきり死体やな、と思ったりしたのだが、実際のところ、それが死体であるということを極力考えないようにしていて、魚の死体だという意識より、ただの食材であるとの意識の方が前にある。死体であるとの意識が先に立ってしまえば、調理などとても出来ないだろう。動物を見て可愛いと思ったりする一方で、平気で動物の死体を美味いだの不味いだのいいながら食えるのだから、人間の意識の切り替えはまったく驚嘆すべきものだと思う。
その後小アジは、えらとぜいごを取り南蛮づけにした。安価で美味い小アジはまったく偉い魚だ。