古井由吉インタビュー

今月号の新潮に古井由吉のインタビューが掲載されているというので、遅ればせながら立ち読みしてきた。インタビュアーは芥川賞落選したばかりの中原昌也(読んだことない)。
インタビュー記事だというのに無駄に活字が拡大されていたりするのが目障りで、よほど読むのをやめようかと思ったほどだったのだけれど、我慢して読んでいるうちに、中原昌也のあまりに俗な質問と愚痴が面白くなってきて、どうにか読み終えた。「一番売れたのはどの本ですか?」とかなんの臆面もなく訊いてしまえるのがすごい。
それにしてあの無駄な活字の拡大はなんだのか。古井由吉から指定してきたとも思えないので、インタビュアーの中原昌也によるものなのだろうけど、拡大して強調する必要用もないようなものばかりで、読む側の人間のことを考えぬ無神経な行為ように思えた。
web上の文章でいわゆるフォント弄りがある程度有用だったのは、web上の文章が基本的に横書きであり、読まれた文章はどんどんスクロールされていって、視界に入らなくなるから、拡大されたフォントのインパクトが十二分に伝わった*1からなのだろう、と思っているのだけれど、今回のように縦書きの、しかも二段組みの場合、一ページ読むのに多少なりと時間がかかり、その間中、視界のすみに拡大された言葉がチラチラと映り続け、ページをめくったところでまず目につくのは拡大された文字であり、一ページあたり一回くらいならまだいいが、頻出してしまっては、気忙しいを通り越してげんなりしてしまう。縦書きの文章のなかで、活字の拡大が有用なのは一ページあたりの文字数が少なく、さっとページをめくってしまえる時だろうと思う。
どうせやるならいっそのこと、ページをめくった途端見開きいっぱいにしかも横書きで「どかーん!」などと書いてしまえばそれなりにびっくりするし、効果的かもしれない(火浦功が似たようなことを昔やっていた気がする)。まぁ、いまどきこんなことでげんなりしてしまう人は少ないのかもしれないが、今回のインタビュー中、もっとも拡大して強調する必要があったのは、古井由吉の「賞なんて貰うのは恥の上塗りだくらいに思っている」という言葉だろう。
前衛的な作家なら今時の芥川賞なんて欲しがっちゃいかんと思うが、経済的には芥川賞作家の肩書きがあるのとないのとで大違いなんでしょうね。みんな貧乏が悪いんだ。

*1:つまり映像的な効果ということか?