ローデンバック/窪田般彌訳 『死都ブリュージュ』(岩波文庫)

荷風が好きだったというだけあって、後年の荷風の作風と通じる要素があるが、物語自体はまっとうな悲劇。都市や部屋にも人格、性格のごときものがある、というも僕もしばしば感じることで、上京した際、上野にのみ「ああ、ここになら住める」という強い親近感を覚えた。勿論人と同じで、第一印象と異なるというのはよくあることなので実際のところは住んでみないことにはわからない。いやしかし、中年の女性が標準語で話しているのを聞いて、「おばはんやったら関西弁でしゃべれや」と変なふうにイラついてしまったことがあるので、上野だろうとどこだろうと、関東には住めないと思う。ローデンバックとは関係ない話。