河野多恵子 『赤い脣 黒い髪』(新潮文庫)

少し奇妙で、少しエロチィックな短編集。河野多恵子はもっとエグいものだとばかり思っていたのでちょっと拍子抜けした。他のは凄そうなんで、おそらく河野多恵子のなかでもライトな部類にはいるのだろう。
地の文ではそうでもないのだけれど、作中の、二十代、三十代の女性の台詞に違和感があって、三十代のキャリアウーマンが美容室での洗髪の最中に加減を訊かれ、「結構よ。いい気持ちよ」と答えるのには、いつの時代の奥様ですかあなたは! と思う。七十代の老婆が書いているというイメージがちらつく所為も多分にあるのだろうけど。一九二六年生まれだから今年でもう八十歳というのが凄い。

赤い脣 黒い髪

赤い脣 黒い髪