喜国雅彦 『本棚探偵の冒険』(双葉文庫)

初版に著者検印がついたり凝った造本で話題になったこの本を文庫で買うことにどれほど意義があるのか、ともし仮に問われれば「僕は読めればそれでいいのです」と答えることになる。積ん読本が随分と溜まってきていても、僕はコレクターではなくて、あくまで読むことを前提に本を買っているわけで、初版や箱入り本に格別価値を見出したりはしておらず、同じ内容であれば箱入り本と文庫本で、当然のように文庫本のほうを選ぶ。ただ最近は読みたい本が古書として価値が高いものになってきてしまっていたりして、藤枝静男の処女作『犬の血』など一冊ン万円もしてしまってとても買えやしない。そんな非コレクターの僕でも、乱歩邸で、「江戸川乱歩様、夢野久作」などと献呈署名の入った『ドグラ・マグラ』を見つけたりしたら驚喜し、訳のわからぬことを叫んだあげく、踊りだしてしまうに違いなく、その他でも「冒険」の名に恥じない喜国探偵の活躍ぶりに、共感したり、呆れたりと随分と楽しかった。バーバリー・ブラックレーベルのライダーズジャケットが欲しいなーなどと思っておらずに(どのみち買えやしないのだけど)もっと古本を買わねば! と思ってしまう。しかしあいにくなことに家の近所には郊外型大型店しかないので、大阪なり京都なりに出るか、地道に店を探して回るしかない。
喜国雅彦は、HR/HM専門誌「Burrn!」で連載されている「ROCKOMANGA」で馴染みだったのだけれど、この本が出るまで古本マニアであることはまるで知らなかった。逆にこの本でしか喜国雅彦を知らない人には著者がメタラーであることは意外だろうと思う。

本棚探偵の冒険 (双葉文庫)

本棚探偵の冒険 (双葉文庫)