阿部昭 『千年/あの夏』(講談社文芸文庫)

自分が父親になったところで、自分の父親になれるわけでもなく、自分に子供が出来たところで、その子供は、かつて子供であったころの自分と同一ではない。ふた組の親子を通して浮かび上がってくるのは内向していく自分自身で、読み進めながら、初めて「内向の世代」という言葉を、実感を持って首肯出来た。
幼年期に出合うエロスの描写が絶妙で、こりゃ堪らん、と思う。