黒井千次 『一日 夢の柵』(講談社)

日常のなかにすっと入り込んでしまった違和をなにげなく取り出してみせる手腕は見事なもので、判で押したような当たり前の日常なんてものはないのだという思いを強くする。日常に紛れ込んだ違和により、どこか齟齬をきたしていることにある日気づいてはっとする。ただそれだけのことが面白い。
『夢の柵』『隣家』『丸の内』『一日』『久介の歳』などが特に楽しかった。

一日 夢の柵

一日 夢の柵