藤枝静男 『硝酸銀』(『空気頭』講談社)

小川国夫が、『硝酸銀』について「これは一篇の物語でありながら、もっと長い物語の一部だといえよう」と書いているのだけれど、まったく同感で、藤枝静男の作品群は『或る年の冬 或る年の夏』以降、以前の二つに大きく分けることが出来ると思っているのだけれど、この『硝酸銀』は『或る年の冬 或る年の夏』により完結する長い物語の序章だと言ってしまっていいと思う。藤枝静男の性慾への過酷なまでの嫌悪の根源がここにはあって、もっと早いうちに読んでいればよかったと後悔した。