横溝正史 『吸血蛾』(角川文庫)

先日の本棚整理の際に出てきたもの。買ったという記憶がまるでない。他にも数冊未読の横溝正史が出てきたが、ほかのものには、いつどこで、とまではいかなくても手にとって表紙を眺めて、「ああ、買っとこか」と思った記憶がわずかばかり残っている。ファッション業界を舞台としていて、舞台も全て東京であるから、東京もの、都会もの、というようなことになるのかもしれないがよくは知らない。
屍体から持ち去られた両脚を、アド・バルンにぶら下げらてみたり、ラインダンスを踊らせてみたり、読者の興味を細かく繋ぐ怪奇趣味に終始していて、あまり出来がいいようには思えなかったが、最後に金田一が語る動機には、ああ、なるほど、と思えた。ただタイトルともなっている蛾の意匠はほとんど機能していない。