嵐山光三郎 『文人悪食』(新潮文庫)

漱石鴎外から始まって池波正太郎三島由紀夫まで、三十七人の文士の食にまつわるエピソードが紹介されている。料理から見た近代文学史にもなっているのだけれど、石川啄木の借金癖や、中原中也の粗暴を暴く筆致は容赦がなく、当たり障りのないことしか書かれていない文学史とはひと味違う。岡本かの子などもひどい書かれようだ。小林秀雄のところで、藤枝静男が引用されていたりしたのが嬉しい。志賀直哉が、フグ刺しは箸でぐるぐるかき集めて食うに限る。ということをいっていて、以前から一度そうやって食べてみたいと思いつつ、品がないからいかんのだろうな、と思っていたのだけれど、志賀直哉がそうするに限る、といってるのだから是非ともそうして食べてみたい。当分そんな機会はありそうにない。そんなことはともかくとして、とても楽しかった。腹減った。

文人悪食 (新潮文庫)

文人悪食 (新潮文庫)