藤枝静男 『寓目愚談』(講談社)

藤枝静男の随筆集はこれですべて読んだことになる。小説のほうもあと読んでないのは『犬の血』『壜の中の水』の二冊のみ(のはず)。読んではいるが手元にないものならまだ結構あるので、全部揃えるのにはまだしばらくかかりそう。
江藤淳城山三郎とのソ連ヨーロッパ旅行のことを書いた随筆が後半に収められていて、材料は同じでも、小説と随筆で随分と趣が違うのが面白い。晩年の作品は小説と随筆が近接してくるが、この頃の随筆に比べると、小説が随筆に近づくのではなくて、随筆が小説に近づいていっている印象がある。それにしても海外旅行を嫌がる藤枝静男を、平野謙や、本多秋五や、埴谷雄高らがよってたかって旅行に送り出す様が面白い。