踏切にて

制服の下にジャージをだらしなく着込んだ女子高生が二人、自転車に跨りながら踏切待ちをしていて、別れた彼氏がどうのとかそんな話をしていて、ここ数日気がくさくさしていて、ちょっと滅入り気味だったから、そのあけすけな態度にげんなりとしてしまった。
遮断機があがると、その女子高生の片方が、自転車をこぎ出そうとしてちょっとよろめいて、すぐ隣にいたワゴン車に軽くぶつかった。女子高生は気にするそぶりも見せず、すぐに持ち直して車より先に踏切を渡った。遅れて踏み切りを渡った車から、追い抜きざまに「危ないやないか、気ィつけんかい」とちょっと怖そうな中年男の声が飛んだのだが、女子高生はまるで怖じ気づかずに、去りゆくワゴン車に向かって「うるさいわぁ、あほー!」と叫んだ。
後ろでその様子を見ていた僕は、その傍若無人さが、なんだか妙に楽しく思えてしまって、沈んだ気分がいっぺんに晴れやかになったのだった。