アイザック・アシモフ/岡部宏之訳 『ファウンデーションと地球(下)』(ハヤカワ文庫)

ファウンデーションの彼方へ』と『ファウンデーションと地球』の二作では、ファウンデーションものとロボットものを主とするその他の作品との結節が企図されているので、少なくともロボットものは全部読んでおかないと、楽しみがだいぶ少なくなってしまう。
ファウンデーションの彼方へ』を読む前に、『鋼鉄都市』『はだかの太陽』『夜明けのロボット』の三作を、『ファウンデーションと地球』を読む前に『ロボットと帝国』を読んでおいたほうがいい。
感想は色々書いてたんだけど、なんだかまとまらなくなってきちゃったので、『ファウンデーションと地球』のラストにのみ言及。それだけでも上記作品の重要なネタバレが含まれてしまう。



トレヴィズの「直感」が正しいならば、ファロムは不吉な存在であり、ファロムとダニールの融合もまた不吉である。他のセツラーよりも進化した人間であるソラリア人との融合で、ロボット三原則が無効化されてしまうかもしれず、また両性具有であるので、ファロムの寿命が尽きたあとも、その後継者にダニールの記憶/能力を受け継がせることが出来るかもしれない。この後のこの世界では、ミュールを超える驚異となったファロム=ダニール(アシモフがロボットを悪役するとも思えないのだけれど)と、ファウンデーション員との戦いというのが安易に想像され、ここでアシモフの未来史が終わってしまうのはなんとも残念である。
それにしても、アシモフの作品はスケールが大きいようで、案外そうでもないのは、組織はほとんど登場せず、絵的な派手さもなく、個人しか活躍しないことで、そもそも銀河帝国にしてから、イライジャ・ベイリの活躍がなければ誕生しなかったわけで、そんなアシモフがガラクシアという選択をひとまずしなければならなかったのは、苦渋の決断だったろうと思う。
そう考えると、ファロム=ダニールが不吉に思えるのも、「これで終わるわけやないんやで〜」というアシモフの意気込みだったのかも知れない。