天沢退二郎 『光車よ、まわれ!』(ブッキング)再読

児童文学表ベストが『扉のむこうの物語』ならば、裏ベストは間違いなくこの『光車よ、まわれ!』で、上野瞭の『ひげよ、さらば』と並んで、二大トラウマ児童文学となっている。
日常に非日常が重なっていき、得体の知れない何者かに狙われながらも、子どもたちが活躍する、というところでは『電脳コイル』とよく似ている(龍子はイサコに通じる要素があると思う)のだが、雰囲気はまるで違っていて、西洋的でも東洋的でもない独特の薄気味悪さがあり、悪役は容赦なく、子どもたちの中から死者すら出てしまう。司修の挿絵もまた怖い。こんだけ怖いのに、こっそりクラスメイトの中に中島みゆきがいたり(天沢退二郎中島みゆきファンであるのは有名)、「がんばれば、マロアカジみたいになれるかもしれないわ。」という台詞が出てきたりして、思わず笑ってしまったりもした。

復刊ドットコムで一票投じて、すっかり忘れた頃に復刊されていたということでも思い出深い。復刊される前には、オリジナルの筑摩書房版にプレミアついて一万円を超えてたりした。子どもの頃に読んで、大人になってから読み返したくなった人がそれだけ多かったということだろう。

光車よ、まわれ! (fukkan.com)

光車よ、まわれ! (fukkan.com)