後藤明生 『謎の手紙をめぐる数通の手紙』(集英社)

短篇集。表題作となっている「謎の手紙をめぐる数通の手紙」では珍しく冒頭から明確な「謎」が出てくる。後藤明生が扱う「謎」は、何気ないところからまるで手品のように引っ張り出されてくる「謎」が多いので、これはちょっと意外だった。わかりやすく謎めいている、というと変だけどそんな感じ。

後藤明生 『汝の隣人』(河出書房新社)

全編イニシャルだらけで、どう考えても作者自身である人物もGと呼ばれる。先輩作家Kは小島信夫で、対談相手の女流作家Kは同年配とあるから、多分倉橋由美子なんじゃないかと思う。金井美恵子だと後藤明生より年下で、河野多恵子だと年上になる。女流作家と言われて思いついた三人が三人ともKだったのはなんだか面白い。編集者Tは名編集者といわれた寺田博かと思ったが、後藤明生より年下のような気がするので違うかもしれない。
名を伏されると「このTとかKとかは誰だろう?」と思い、自分でわかる範囲で当てはめてみようとする。何人か当てはまると、誰だかわからない残りのTやKも実在の人物のだろう、と思う。ただここにある種のワナがあって、名前は特定されていないのだから、このTやKは別に誰だって構わない。Gは後藤明生ではないかもしれない。Gとプラトンの『饗宴』を巡って、架空問答を繰り広げる博多の大学教授Tなどは、作中「しかし、T教授ってのは実在するのかなあ」と書かれていて、これは鈍い読者に対するサービスだろう。

図書館へ

昨日は炎天下(というほど暑くもなかったのだけど)大変くたびれたので、午前中から図書館に行ってのんびり読書。受験生に交じってグダグダ本読んでるだけ、というのもなんだか後ろめたい。一時過ぎくらいに、一人力尽きて机に突っ伏してしまうと、連鎖して二三人倒れてしまって、僕も釣られて三十分ほど昼寝してしまったりした。

本日の購入

石川淳 『至福千年』(岩波書店
小川国夫 『或る聖書』(筑摩書房
加藤周一 『幻想薔薇都市』(新潮社)
『新潮日本文学アルバム 志賀直哉』(新潮社)
『新潮日本文学アルバム 永井荷風』(新潮社)

下鴨納涼古本まつりに行く

奇特な人といるのはいるもので連絡をくれたtomoさんと一緒に下鴨納涼古本まつりへ。度々休憩を挟みつつ二時間ほどいて、結局500円以下の安いものしか買わず。後藤明生が何かないかと探してたのだけど、結局一冊も見つけられず、tomoさんに「後藤明生なんて今時誰も読んでないですよ」とか言われてしまう。なにはともあれ本の話がアレコレ出来るのは楽しい。

下鴨納涼古本まつり

8月11日(土)か12日(日)のどちらかに、京都下鴨神社で開かれる下鴨納涼古本まつりに行くつもりで、折角お祭りなので、他に行ってみたい人があれば一緒に行こうじゃありませんか、というお誘いなのですが、ここを見ていて、関西在住で、なおかつ炎天下数時間僕とほっつき歩きたい人がそうそういるようにも思えないのだけど、一応書いてみたりします。ということで、僕と一緒に「下鴨納涼古本まつりに行きたいぞ!」という奇特な方がいらっしゃいましたら、aranoあっとまーくdimetea.orgまでご連絡ください。

本日の借本

後藤明生 『円と楕円の世界』(河出書房新社
後藤明生 『汝の隣人』(河出書房新社
後藤明生 『謎の手紙をめぐる数通の手紙』(集英社
後藤明生 『日本近代文学との戦い』(柳原出版)
真銅正宏 『小説の方法 ポストモダン文学講義』(萌書房)
なんだか「後藤明生ばかりどっと読む」という感じ。