後藤明生 『分別ざかりの無分別』(立風書房)

初期のエッセー集。飛騨に行けば、『高野聖』の話になり、佃島に行くと『墨東綺譚』へと脱線する。小説として書かれていないはずなのにどこか小説めいてくる。自分の身辺を題材としても小説が私小説化することのない後藤明生の場合、エッセーも自然と小説になってしまうのかもしれない。

分別ざかりの無分別 (1974年)

分別ざかりの無分別 (1974年)

天沢退二郎 『ねぎ坊主畑の妖精たちの物語』(筑摩書房)

1994年に刊行されたもので今回が初読。
相変わらず不思議というか不気味なファンタジーなんだけど、ユーモラスでもあって、「グーンの黒い地図」に出てくる出目金少女隊とか思わず笑えてしまう。

ねぎ坊主畑の妖精たちの物語

ねぎ坊主畑の妖精たちの物語

ねぎ坊主畑の妖精たちの物語 (fukkan.com)

ねぎ坊主畑の妖精たちの物語 (fukkan.com)

装丁も同じなのに筑摩版に五千円のプレ値がついていたりした。ブッキング版はブッキング版で結構高いんだけどね。

『電脳コイル』第十三話「最後の首長竜」(ETV)

オバちゃんがリアル女子高生でのけぞったり、イサコ様不足でもだえたりしつつ、そうかぁ来週は総集編かぁ、と思いきや、次回放送は25日とあって唖然。二週間も放送がないだなんて、まるで肉抜きの牛丼、カルピスのない夏休みみたいじゃないか! と一人吠える。ああ、高校球児を恨むまい。

後藤明生 『小説の快楽』(講談社)

後藤明生生前に刊行された最後の本。
タイトルにもなっている「小説の快楽」で芥川竜之介の『芋粥』と宇野浩二の『蔵の中』がゴーゴリの『外套』を挟んで繋がることを示し、小説が、小説を読んで書かれたものであることを解き明かすくだりは後藤文学のエッセンスでもあり、それが学生達への講義として行われていたというあたちがいかにも後藤明生的で面白く、学生に文学を教えるということを小説の題材としたかったんじゃないのかなぁと思われ、なんだか悔しくなってしまう。せめてあと十年長生きして欲しかった。

小説の快楽

小説の快楽

天沢退二郎 『オレンジ党、海へ』(筑摩書房)

『オレンジ党と黒い釜』、『魔の沼』と続いた「オレンジ党」シリーズ(一応の)完結編。地元の図書館には『魔の沼』までしか置いてないので子どもの頃にも読んでいないはず。あるいは小学校の図書館で借りて読んでいたかもしれないが、記憶は定かじゃない。
日常の中に非日常が入り込み、夢と現実が錯綜する、と書くとなんだかよくある幻想文学みたいだけど、天沢退二郎の場合、特異性が強く、類を見ない独特の世界であると思う。運動会の玉入れにカモメが紛れ込むところなんてなかなか凄い。
手元に揃えておきたいシリーズで、復刊ドットコムのおかげで入手困難ではなくなんってるんだけど、お値段がちょっと高いんだよなー。続編が執筆されるという話もどこかで読んだ記憶があるのだけど、結局どうなったんだろう。

オレンジ党、海へ (fukkan.com)

オレンジ党、海へ (fukkan.com)

『電脳コイル』第十二話「ダイチ、発毛す」(ETV)

今までで一番笑ったかもしれない。京子のチュウ顔とかツボ。イサコのみヒゲ顔回避されちゃうあたりスタッフの偏愛を感じる。
生れ故郷にたどり着いたヒゲイリーガル達が高度な文明を発展させ、ピンチに落ち入ったヤサコ達を救う、みたいな展開があれば凄いと思うのだけど、これっきりかな。