東野圭吾 『容疑者Xの献身』(文藝社)

一時アンチ新本格を標榜していた僕にとって東野圭吾連城三紀彦と並んでのお気に入りのミステリ作家で布教活動に努めていたりしたぐらいだったのだけれど、東野圭吾が描く男女関係(特に女性描写)が段々と受け付けられなくなってきて『白夜行』を機に読むのを辞めてしまった。そのため評判の高かった『容疑者Xの献身』も読む気がしなかったのだけれども、年末のランキング本で次々と一位を獲得していったのと『名探偵の掟』を久々に再読したのとで、読んでみようと思っていたところ古本屋の店頭に運良く並んでいたので買ってきた。

率直にいってミステリ小説としては大変な傑作である。超傑作である。世界中に翻訳されて世界各国のミステリ愛好家に読まれるのがよいと思う。が、しかしやはりここで描かれている男女関係には躓いてしまった。登場人物に血の気が通っていないとは言わないが、血の気が半分くらい足りない気がしてラスト感動し損ねてしまった。これも東野圭吾の描く男女関係は苦手だという余計な予断があった所為で、これさえなければ文句なしに楽しめであろうことを思うと、とんでもない損をした気分である。

容疑者Xの献身

容疑者Xの献身