黒井千次 『昼の目と夜の耳』(潮出版社)

黒井千次三冊目のエッセー集。市民生活、家庭、職場・企業の三つのテーマからなる。初出を見ると職場や企業をテーマにしたエッセーの半数は『月刊総務』なる専門誌に発表されているのだけれど、黒井千次が勤めを辞めてからは『月刊総務』には一切発表されていない(他のエッセー集に収録されているのかもしれないが)。タイトルも『上役は必要悪である』とか『女子も男子も同じである』など、教条的であるのがいかにも可笑しい。仕事を辞めてからのものの方が俄然面白く、「自由業者」に対する「不自由業者」の考察などがとりわけ興味深かった。