J・G・バラード/山田和子訳 『コカイン・ナイト』(新潮文庫)

キーとなる人物であるボビー・クロフォードが『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンのように思えたのと、舞台となっている早期退職者の富裕なコミュニティというものに実感を持てないこともあって、それなりに面白く読みつつもそれなりで終わってしまった。
ネタばれになるが*1星新一ショートショートに、暇を持て余している老人が、ある犯罪(確か殺人だったと思う)に、電話を一本かけるといった程度に荷担することによって満足得るというものがあって、犯罪の共有による意識の改革というテーマにさほど新しさを感じなかった。むしろありふれたもののように思う。主人公であるチャールズ・プレンティスの主体性のなさにも興を削がれる。ただ、五百ページを超える長編を退屈することなく読み終えたのは確かなことなので、やはりそれなりには面白い。

コカイン・ナイト (新潮文庫)

コカイン・ナイト (新潮文庫)

*1:ここで書いていることに他者に紹介したり薦めたりという意図はほとんどなく、単に自分の感想をざっと書きつけているだけなので、特に断りもなくネタばれしていることが多々あるということは一応書いておいたほうがいいかもしれないと思ったので書いておく。