本多秋五 『物語 戦後文学史 (上)』(岩波現代文庫)

近代文学』創刊の件が知りたくて買ったのだけれど、その他のところも戦後間もない頃の熱気のようなものが感じられてとても面白かった。藤枝静男が書いていたような本多秋五自身の困窮はさすがに触れられていなかったけれど、そのことを頭に入れて読むと、下手な青春ものよりもよほど青春していて、熱い。熱血貧困文士だ。『近代文学』創刊については、埴谷雄高の「『近代文学』創刊まで」(『鞭と独楽』)に詳しいらしいのでそちらも読んでみようと思う。
ただここで登場するのは、本文中にもある通り、本多秋五と同世代かそれより下の戦後の新人ばかりで、永井荷風志賀直哉などの大御所についてはほとんど触れられておらず、歳もキャリアも上の作家たちが、戦後の新人をどう見ていたのか、少し気になった。

物語戦後文学史 (上) (岩波現代文庫―文芸)

物語戦後文学史 (上) (岩波現代文庫―文芸)