二〇〇六年総括

総括というほどのこともない。本読みメモ書きどころなので、本の話に限っていえば、二〇〇六年は、黒井千次古井由吉を初めて読んだことが印象に残っていて、現在の僕の関心は、この二人と、藤枝静男後藤明生の四人にある。念願だった後藤明生の『壁の中』と、藤枝静男の『今ここ』を読むことが出来たのも印象に残っている。それにしても、我ながら流行り廃りとまるで関係のない組み合わせで、来年はもう少し現在活躍している作家に関心を持とうと思う。古川日出男森見登美彦などに少し興味がある。現代(現在?)文学になかなか馴染めないでいる人(つまり僕)にお勧めする現代(現在?)文学ベストテンなどということを誰かがしてくれれば便利でいいな、と思うので、誰かしてくれまいか。
今年読んだ本の一覧を自分で見返してみて、P・D・ジェイムズを全部読むぞと思っていたことを思い出した。結局五冊した読んでない。映画『トゥモロー・ワールド』が評判がいいらしいので、敬遠されがちな小説のほうも読む人が増えればいいと思う。
今数えて見たところ年内に読んだのは九十六冊で、別にノルマを課して読んでいたわけではないのだけれど、百冊に達しなかったのがなんだか少し悔しい。あと、例年ノンフィクションを集中して読む時期があったりするのだが、今年はほぼ小説しか読んでいない。
相変わらず今年刊行された本をほとんど読んでいないので、年間ベストみたいものを書く必要を感じないので、書きはしないが、数少ない今年刊行され読んだ本のなかから人にお勧めするとしたら、黒井千次の『一日 夢の柵』をお勧めしたい。派手さのない地味な短編集ではあるものの、日常のなかに潜む違和をすっとすくい上げる手腕はそれがさりげないだけに、凄いものだと思う。

一日 夢の柵

一日 夢の柵