藤原伊織 『ひまわりの祝祭』(講談社文庫)

お話がアクロバティックなのはいいとして、それに合わせて主人公が超能力まがいの博才を持っていたり、実は射撃の名手だったりするのはいささか白ける。半ば面白く読みつつも、この主人公に同調出来ず、いまひとつ堪能できなかった。
どうでもいいようなことだが、解説で郷原宏という人が「藤原氏ほど美しく正確な日本語で小説を書ける人は、いわゆる純文学の作家を含めてもきわめて珍しい」とか「修辞的(レトリカル)であっても修飾的(デコラティブ)ではなく、名文ではあっても美文ではない」などとやたら文章を持ち上げているのには辟易した。文章の上手い下手は確かにあるけれど、ある程度以上になってくると読み手の好みの問題で、「いわゆる純文学の作家を含めてもきわめて珍しい」などといってしまうのは無邪気過ぎる気がする。僕の好みを率直にいえば、藤原伊織の文章は「そこそこ」ということになる。

ひまわりの祝祭 (講談社文庫)

ひまわりの祝祭 (講談社文庫)