安部公房 『笑う月』(新潮文庫)

夢の考察、夢に関するエッセーのようなものから始まって、徐々に夢そのものへと移行していく短編集の流れそのものが実に夢っぽい。
ところで、起きた時に思い出す夢は、どれほど夢見ている時の夢と同一なのだろうか。僕も自分自身の見る夢に興味を引かれることがたたあって、時に描出してみようと試みるのだけれど、どうも上手くいかない。見た夢を描写しようとすると、どうしても目覚めた意識の介在があって、夢の解釈、合理化が行われてしまい夢は改変されてしまう。しかしこの夢の改変は、目覚めてから夢見た夢を思い出している時にも行われているようでもあり、夢の正確な再現はなかなか難しい。