高橋源一郎 『虹の彼方に』(新潮文庫)

単にわかるわからないでいえば、ちらりと読み始めて数ページで頓挫したままの『響きと怒り』より、こちらのほうが断然わからないのではないか、と思いつつ最後まで読むと、なんだかわかったようなつもりにはなって、なんだかよくわからない切実な読後感が残った。しかし、言語による実験は、「言語によって」しまっている時点で、いかんともしがたいほどに言語に囚われてしまって、実験的でなくなってしまっているのではないか、と最近漠然と思ったりする。