アンドレ・ジイド/山内義雄訳 『贋金つくり(下)』(新潮文庫)

297頁から始まったので驚いた。下巻ではついに鬼畜エドゥワールがオリヴィエくんを毒牙にかけてしまう。ジョルジュくんも狙われちゃうし、さいごにはベルナールの弟カルーブくんにまで興味を示すのだから、朴念仁のふりしてなかなかそっち方面は如在ないエドゥワールさんなのでした。というのは別にふざけているわけではなくて、正直な印象で、萩尾望都の『トーマの心臓』なんかを思い出してしまい、これを読んだ横光利一が「純文学にして通俗小説」ということをいいだすのがなんなくわかる気がした。この作品をメタフィクションの元祖として読むにはさらに『贋金つくりの日記』を読む必要がある。
メモ。パサヴァン伯爵のモデルは、プルーストパトロンであったロベール・ド・モンテスキュー(シャルリュス男爵のモデル)であるらしい。