『電脳コイル』(ETV)

番宣を見て珍しく興味を持ち、金曜に放送された第一話の再放送と土曜放送の第二話を録画しておいて、今日見てみたらえらく面白かったので色々感想を書いてみたい。


近未来の話ながら、神社や駄菓子屋があり、街並みもことさら古めかしくはないものの、どこかノスタルジックな雰囲気があって、近過去に近未来が同居している。これは古くは『機動警察パトレイバー』あたりからちょくちょく見られた光景で、最近の近未来ものではほぼデフォルトとなったような感があるが、それが特にこの作品において印象的なのは、主人公たちが子どもたちであり、彼らが演じているのが、僕らが子どもの頃体験した「ごっこ遊び」の延長であるからで、ジュブナイルな懐かしさに満ちていて、作品世界に引き込まれてしまう。
電脳世界と現実世界を単純に二分してしまわずに、現実世界の上にメガネをかけることによって、電脳世界が重ね合わされる(近過去の風景に近未来が重ねられる)というのが『電脳コイル』の世界の面白いところで、まるで『オズの魔法使い』のエメラルドシティにおける眼鏡のようだ。ただこの現実世界も、本当に現実世界なのであるかは今のところはっきりとせず、あるいは子どもたちの見ている電脳世界とはレベルの異なる電脳世界なのかもしれない。大黒市で生まれ育ったはずのフミエが知らない鳥居の連なった階段、存在しないはずのお兄ちゃん、ミチコさんにより連れて行かれるという「アッチ」、謎の「鍵」と「鍵穴」(当然鍵は扉を開けるためのものだ)といったものが、別の世界があることを示唆しているように思う。特に「階段」はオープニングにも登場しているし、第一話に「大黒市階段伝説」なるものが記された案内板が出ていて(フミエがオードーリーを捕まえようとしているシーン)、「大黒式階段を特定のルートで辿っていくと、極楽浄土にたどり着く」というようなことが書かれていた。大黒市に建築中の建物が多いのもなんだか怪しい。
デンスケは錠前をぶら下げている。これがイサコのいう「鍵穴」だろうか。デンスケは伝助、つまり何かを伝えるの助ける役目を負ってそうだ。放送局などで使われる携帯用録音機の俗称もデンスケであるらしい。デンスケをヤサコにくれたおじじもキーキャラになってきそうで(そもそもデンスケとはおじじの名前かもしれない)、オープニングでおばばがのぼる階段に「電脳生理学序論」という本があったりすることから、電脳関係の学者だったのではないかと思う(おばばの本かもしれないけど)。
一話完結でなく、一話も二話もそのまま次回に繋がっていくのが、しっかりとしたストーリーの存在を裏付けているようで、今後の展開に期待が高まる。
夏休み直前という設定から、なんとなく夏休みになったところで終わるんじゃないかという気がする。
トトロオマージュは作品そのものにも関係してくるのだろうか。
ヤサコはオヤジがブリーフを穿いたような謎のキャラクターのグッツを集めているようで、鞄にその人形がぶら下がっていて、部屋にそのキャラクターが描かれた時計がある。
絵柄は今風ではないものの、動きや仕草、スカートの揺れなどが詳細に描かれているので、少女の身体性がよく出ていて、今風の萌え絵柄のキャラよりも、よほどエロティックである気がする。
ヤサコに見つめられて頬を赤らめたりデンスケを救出したり、初回大活躍だったオヤジが結構好きで、今後も活躍して欲しい。
釣り竿が糸電話にもなるというアイディアがステキ。
こういうのをユビキタス社会というのだろうか。
電脳ペットは『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』の電気動物みたいだ。
天沢退二郎の『光車よ、まわれ!』なんかも思い出す。
サッチーは夢に出てきそうなほどのインパクト。
公式サイトは用語辞典を設置すべきだ。
コンピューターおばあちゃん世代なので、おばばのキャラがツボにはいってたまらない。おでこからビーム出すなんてステキ過ぎる。僕の中で既に『じゃりン子チエ』の竹本キクと並んで二大おばあちゃんキャラとなった。方向性は違うけどのび太のおばあちゃんも加えて三大おばあちゃんキャラとしてもいいかもしれない。


ということで、とても面白かった。