『電脳コイル』第三話「優子と勇子」(ETV)

この世界でいう通常空間ってのも、僕らの世界でいう通常ではない気がしてきた。『電脳コイル』の世界は単なる近未来でなくて、そもそも世界の成り立ちからして、僕らの世界とは違うんじゃないだろうか。


電脳コイル』の世界では「電脳空間」と「通常空間」は単純に二分出来るものでなく、もっとゆるやかな繋がりを持っていて、時に「電脳空間」での出来事も「通常空間」に影響を及ぼしうる。どこかに巨大なサーバがあって、そこに通常空間のデータを保持されている、つまり「通常空間」もメガネを通してみる「電脳空間」とはレベルの違う「電脳世界」だ、ということでもなくて、そもそもの世界の成り立ちからして電脳的であると。それは夢と現実が地続きであるというような感覚に近いような気がする。するってぇと、この前ちらりと書いた「アヴァロン」よりも「パプリカ」の世界に近いってこのなのかな。「パプリカ」で、夢が現実を浸食したように、この世界では「電脳物質」による「通常空間」への浸食が起こりうるとか。
コンピュータ関係の用語が散りばめられているから、思わず現実のコンピュータの仕組みや概念を持ってきて、『電脳コイル』の世界を捉えようとしてしまうけれど、実はもっと幻想的な世界観を持つのかも知れない。
そう考えるとメタタグがお札の姿をしているのも、本来メタタグがお札そのもの、つまり呪術的存在だったからで、メガばあは最近メタタグを練る技を身につけたのではなく、古来からある技術を近代的に昇華させただけなのかもしれない。
鳥居によりサッチーたちから身を隠せるのも、鳥居が本来、神域と俗界を区切る結界であり門であるからで、「管理外ドメイン」なんていかにもな言葉が用いられているものの、サッチーが侵入出来ないのは、管理外ドメインと設定されているから入れないのではなくて、鳥居の中が神域だから入れないんじゃないだろうか。
鳥居といえば、今回主な舞台となった工事現場の中に鳥居がいくつも置かれているところがあって、もしかしたら、別世界の入り口である神社を、当局(多分「大黒市空間管理室」)が、どんどん壊しているのかもしれない。あるいは、別世界への入口(ヤサコの夢に出てきた階段)を作るために集めているとか。


まだまだ謎は多く、基本的な設定すら定かではなくって、上に色々書いたことにしても、そんな風にも考えられるというだけのことで、他にも様々な解釈が出来るので大変楽しい。こっそり一話から出ている「大黒式階段」の謎も本編の中ではまだちゃんと出てきてないわけだし、そもそも電脳メガネはどのような意図を持って作られたものであるのか、もまだよくわからない。


と、なんだか世界観だけにハマってるような感じなのだけど、僕が『電脳コイル』を魅力的に思うのは、勿論それだけではなくて、子どものころの「ごっこ遊び」の延長にあるジュブナイルな雰囲気こそがもっとも魅力的な要素であり、それがあるからこそこれだけハマってしまえるのでした。