廣野由美子 『批評理論入門』(中公新書)

小説技法の紹介と批評理論の紹介の二部に別れていて、どちでも『フランケンシュタイン』一作のみが用いられているので、取り上げる項目ごとに作品を変えるような煩雑さがなく、詳細に取り上げられているので、実際に『フランケンシュタイン』読んだことがなくとも、あまり気にならない。
小説技法篇では、普遍的に取り出しうる技法に限って紹介されている。小説をある程度読んでいれば、だれでもそれなりに触れているような要素ばかりなのだけれど、それだけになんとはなしにわかったつもりになっていて、実のところよくわかっていなかったのだな、ということがよくわかった。
批評理論篇はいささか駆け足気味なのだけれど、取り上げられているのが『フランケンシュタイン』一作のみなので、それぞれの批評理論の違いが明確に出ており、批評がもつ様々な可能性と、様々な観点/立場から批評しうる小説の豊饒さがよくわかった。
小説の奥深さに改めて気づかさてくれる良書だと思う。
この著者が参考にしたというデイヴィッド・ロッジの『小説の技巧』も読んでみたい。

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)