ジェラルド・カーシュ 西崎憲 他訳 『壜の中の手記』(晶文社)

出来の良い短篇集だと思った。だだ、すんなりと受け入れることの出来る既存のパターンを上手に組み合わせたものを出来が良いというように感じるのであり、安心して読め、腑に落ちる度合いが高ければ高いだけ、似たようなものを読んだことがあるような気になってくる。具体的には『柘榴病』とか『悪魔祈祷書』あたり。つまり日本の昔の探偵小説と同じ雰囲気をあって、タイトルが『新青年傑作選−海外編−』となっていてもおかしくない感じがした。面白く読めはするが、消化が良すぎて少し物足りない。
表題作である『壜の中の手記』といえばポーの作品名でもあるのだけど(原題は違う)、途中でもしやと思った通り某有名童話とまったく同じオチだったりして、偶然同じだったのか、この二作に共通する元ネタがあるのかちょっと気になった。

壜の中の手記 晶文社ミステリ

壜の中の手記 晶文社ミステリ

文庫版とは収録作が一部異なるというのがいやらしい。