マルセル・プルースト/鈴木道彦訳 『失われた時を求めて 2 第一篇 スワン家の方へⅡ』(集英社文庫)

第一篇第二部『スワンの恋』は語り手である「私」の直接的な見聞を離れて、三人称的に書かれているのに、この中にも時折「私」が顔を出していて、私見を述べていたりする。『失われた時を求めて』全体があくまでこの「私」により書かれているとすると、この『スワンの恋』は「私」がのちに知り得たことをもとに再構成した小説、つまり作中の現実に基づくフィクションと見なすのが妥当のように思えるのだが、この語り手である「私」が、作中人物の域を超えて、他の作中人物の内面にまで踏み込んでいる、つまりいわゆる神の視点に立って他の登場人物の内面を物語っている箇所は他にもあるから、『スワンの恋』を作中作と見なさず、他の部分と同レベルの作中現実の話だと見ることも出来るのかもしれない。なんともややこしい限りで、結局のところは作中の語り手である「私」も含めてプルーストが書いたフィクションやんけ、といってしまうともう身も蓋もない。
ヴェルデュラン夫妻のサロンの俗物っぷりは、現在のSNS等の身内だけのコミュニケーションにも通じる要素を感じたりした。閉ざされたコミュニティの滑稽さは今も昔もあまり変わらない。


これでやっと十三分の二。全部読み切った時には達成感のあまり失禁しちゃったりするんじゃないだろうか。