マルセル・プルースト/鈴木道彦訳 『失われた時を求めて 3 第二篇 花咲く乙女たちのかげに Ⅰ』(集英社文庫)

一冊挟んで今月二冊目の『うしとき』読了。他にも色々併読していたので『うしとき』ばかり読んでいる感覚はあまりなかった。ところで『うしとき』って結構使われそうで使われてない略称だよね。仏文科の学生が使ってたりしないやろか。
前巻では見られなかった(と思う)語り手の作者としての読者への語りかけや、「時間」や「文学」への言及が度々表れくるようになって、全体の主題がじわじわと浮かんできたような感じ。
語り手のジルベルトへの恋は「スワンの恋」での、スワンのオデットへの恋の変奏のようで、スワン夫人のサロンはヴェルデュラン夫人のサロンからの分派のようであり、いささか唐突に「スワンの恋」が挿入された理由がよくわかった。
ここで描写されているサロンは、人脈のゲームのようで、ジルベルトが語り手と出会った当時、人取りごっこに興じていたりするのは、ジルベルトもやがてサロンを開くということの伏線なのやも。人取りごっこがどんな遊びなのかいまひとつわからないのだけど。
スノブな人物が出てくるところほど面白く読めたりする。バルベックのホテルの常連グループとかもなかなか凄いね。
今のところ一番興味深い人物はフランソワーズで、他のブルジョワ階級や貴族階級の人物とは大きく異なった独自の論理で生きており、あるいはもしかしたら俗物でないという意味では最も高貴な人物といえるんじゃないだろうか。