阿川弘之『南蛮第2阿房列車』(新潮文庫)

内田百間の『阿房列車』との最大の違いは国内か国外かということではなく、ヒラヤマ山系くんの不在であると思う。阿川弘之のお供はいつも不平不満だらけで、ただ列車に乗るだけの阿房らしさを肯定的に読んでいる身にしてみれば、彼らの存在はどうにも邪魔っ気で、興を削がれるし、なんだか阿川弘之が可哀想になってくるのだが、阿川弘之自身が、百間先生以上に、腹を立て、不平を述べていて、「南蛮腹立列車」と改題するのが適当ではないか、とすら思えてしまった。
ところで、ころころ変わる旅のお供だが、「孤狸庵」、「マンボウ」は遠藤周作北杜夫*1であるのは明記されているし、されていなくてもわかるのだけれど、「幽霊」「葱」「青井夫人」などが誰なのかがわからない。「上野毛の毛虫」は調べてみると吉行淳之介であることがわかって、ちょっと驚いた。「黄金虫」は邱永漢だった。
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*1:兄の斎藤茂太も出てくるがこちらは特にあだ名はない。